筋トレブームやダイエット需要の高まりを受け、プロテインはもはや「健康に良いもの」として広く定着した感がある。コンビニでも手軽に買えるようになり、運動習慣のない人が美容や健康維持のために日常的に飲むケースも珍しくなくなった。
しかし、「プロテインは万人に安全か」と問われると、答えは必ずしもイエスではない。腎臓専門医や栄養の専門家の間では、「プロテインを積極的に勧めるのは限られた人だけでよい」という見解も根強く存在する。
この記事では、プロテインを飲むことでかえってリスクが生じる可能性のある人たちについて、医学的な背景とともに丁寧に解説する。「なんとなく飲み始めた」「家族に勧めようとしている」という方はぜひ最後まで読んでほしい。プロテインの正しい活用法は、自分の体の状態を知ることから始まる。
慢性腎臓病(CKD)の人:最も注意が必要なケース
プロテインを飲むことで最もリスクが高いとされるのが、慢性腎臓病(CKD)の患者だ。この点は医療機関でも一致した見解となっている。
なぜ腎臓に影響するのか
タンパク質は体内で消化・代謝される過程で「尿素」などの窒素化合物を生じさせる。これらは血液を通じて腎臓でろ過され、尿として排出される。腎臓が正常に機能している人であれば問題ないが、腎機能が低下している人では、このろ過作業が過剰な負担となる。
慢性腎臓病の重症度は「eGFR(推算糸球体ろ過量)」という指標で分類される。一般的に以下のように段階が設けられている。
- ステージG1・G2(eGFR 60以上):腎機能はほぼ正常だが、尿タンパクなどの異常あり
- ステージG3a・G3b(eGFR 30〜59):軽度〜中等度の低下
- ステージG4(eGFR 15〜29):高度の低下
- ステージG5(eGFR 15未満):腎不全・透析検討段階
ステージG3以降では、主治医からタンパク質の摂取量を制限するよう指導されるケースが多い。この状態でプロテインを追加摂取することは、腎機能のさらなる悪化を招く恐れがある。
注意すべき点
- CKDは初期段階では自覚症状がほとんどない
- 健康診断で「クレアチニン値が高め」「eGFRが低め」と指摘された経験のある人は要注意
- プロテインを飲む前に、かかりつけ医に腎機能を確認することが強く推奨される
「腎臓が悪い患者さんは、普段の食事でも注意が必要なのに、プロテインでさらに大量のタンパク質を摂るのは危険」という専門医の声も複数報告されている。

乳糖不耐症・消化機能が低下している人
プロテインの主流製品の多くは「ホエイプロテイン」と呼ばれる、牛乳を原料とした製品だ。ホエイは乳清(チーズを作る際に出る液体成分)から精製されており、乳糖(ラクトース)を含む場合がある。
乳糖不耐症との関係
乳糖不耐症とは、乳糖を分解する酵素「ラクターゼ」が少ないか欠如している状態を指す。牛乳を飲むとお腹が痛くなる、下痢になるという人の多くがこれに該当する。ホエイプロテインを飲んで同様の症状が出る場合、乳糖が原因である可能性が高い。
症状の例としては以下のようなものがある。
- 腹部膨満感(お腹が張る)
- 下痢・軟便
- 腹痛・腸鳴り
- おならが増える
こうした症状が出る人は、ホエイプロテインを避けるか、乳糖をほとんど含まない「ホエイアイソレート(WPI)」タイプ、あるいは植物性の「ソイプロテイン」「ピープロテイン」などを検討する必要がある。
消化機能全般が低下している人
高齢者や慢性的な消化器疾患を抱える人、過度なストレス状態にある人は消化・吸収能力が低下しているケースがある。そのような状態でプロテインを大量に摂取しても、十分に吸収されないばかりか、腸内環境を乱す原因になることがある。
専門家の中には「消化力が十分にある状態でなければ、プロテインは飲まないほうがよい」という意見もある。不調を感じながら飲み続けることは、体に対するシグナルを無視することになりかねない。

特別な理由のない一般的な健康成人
腎臓専門医の中には、「プロテインが本当に必要なのは限られた人だけ」と明言する医師も少なくない。具体的に「積極的な摂取が検討されるケース」として挙げられるのは、主に以下のような人々だ。
- 虚弱状態(フレイル)にある高齢者
- がん患者など疾患による低栄養状態の人
- ボディービルダーや競技アスリートなど、通常の食事では補えないほどの高強度トレーニングを行う人
逆に言えば、普通に食事が摂れており、激しい運動もしていない健康な成人が、なんとなくプロテインを飲む必然性は低いということだ。
食事から摂れるタンパク質で十分なケースが多い
日本人の食事摂取基準(2025年版)によると、成人のタンパク質推奨量は男性で65g前後、女性で50g前後とされている。一般的な日本の食事(米・魚・豆腐・卵など)を3食きちんと摂っていれば、多くの人はこの量を満たしている。
プロテイン1杯あたりには通常15〜25gのタンパク質が含まれており、食事との合計が過剰になるケースも珍しくない。過剰なタンパク質は体内で使われず、腎臓や肝臓への負荷として蓄積されていく。
「あえてリスクを冒してまでプロテインを飲む必要はない」という専門家の言葉は、こうした背景から来ている。健康な人が日常的に飲む場合は、必ず食事全体のバランスを見直した上で判断することが大切だ。

肝臓疾患・アレルギー・薬を服用中の人
腎臓と同様に、肝臓もタンパク質の代謝に深く関わる臓器だ。タンパク質はアミノ酸に分解されたのち、肝臓でさまざまな代謝を受ける。そのため、肝機能が著しく低下している人(重症の肝硬変など)では、過剰なタンパク質が肝性脳症を誘発するリスクがあるとされている。
ただし、肝臓疾患の種類や重症度によって対応は大きく異なるため、必ず主治医の指示に従うことが前提となる。
食物アレルギーがある人
プロテインの原材料には、主なアレルゲンが含まれることがある。
| プロテインの種類 | 主なアレルゲンリスク |
|---|
| ホエイ・カゼイン | 乳(牛乳アレルギー) |
| ソイプロテイン | 大豆 |
| エッグプロテイン | 卵 |
| ピープロテイン | えんどう豆(比較的少ない) |
牛乳アレルギーや大豆アレルギーを持つ人は、原材料表示を必ず確認することが必須だ。「乳不使用」「大豆不使用」などを明記した製品も増えているため、自分のアレルギーに合わせて選ぶ必要がある。
薬を服用中の人
特定の薬剤とプロテインや、それに含まれる成分(ビタミン・ミネラルなど)が相互作用を起こす可能性がある。たとえば腎臓病の治療薬を服用しているケースでは、高タンパク摂取が治療効果を妨げる可能性がある。複数の薬を服用している人は、プロテインを始める前に医師や薬剤師に相談することを強く勧める。

飲む前に確認すべき3つのチェックポイント
プロテインを飲み始める前に、以下の3点を自分自身で確認しておくことが、リスクを最小化するための実践的なステップだ。
① 自分の健康状態を把握する
- 直近1〜2年以内に健康診断を受けているか
- クレアチニン値・eGFR・尿タンパクの数値に異常はないか
- 肝機能(ALT・AST・γ-GTP)は正常範囲内か
- 何らかの慢性疾患や服薬中の薬はないか
これらに不安がある場合は、かかりつけ医に相談してから判断するのが最善だ。
② 食事でのタンパク質摂取量を把握する
- 1日3食きちんと食べているか
- 魚・肉・卵・大豆製品などタンパク質源は日々の食事に含まれているか
- プロテインを追加することで過剰摂取にならないか
③ プロテインを飲む目的を明確にする
- 筋肉増量・ダイエット補助・栄養補給など目的が明確か
- その目的は食事の改善では達成できないか
プロテインは「体に良いもの」というイメージが先行しがちだが、体の状態や生活習慣によっては不要どころか逆効果になることもある。自分にとって本当に必要かどうかを冷静に見極めることが、長期的な健康管理の第一歩となる。

まとめ
まとめ
プロテインを飲むことにリスクが伴う可能性が高いのは、主に慢性腎臓病(CKD)の患者、乳糖不耐症など消化機能に問題がある人、そして特段の必要性がない一般的な健康成人の3つのグループだ。腎機能が低下している場合、タンパク質代謝で生じる窒素化合物の処理が過剰な負担となる。また、乳糖を含むホエイプロテインは消化器症状を引き起こすことがある。プロテインはあくまで食事で補えない場合の補助手段であり、必要性・安全性を自分の健康状態に照らして判断することが重要だ。不安がある場合は、摂取前に医師や管理栄養士へ相談したい。
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